2025.09.11

ギヤの射出成形における注意点

射出成形は、高精度な部品を効率的に大量生産できる優れた技術ですが、その一方で、特有の注意点を理解しておく必要があります。この記事では、ギヤの性能を左右する成形時の重要なポイントについて解説します。

ギヤの射出成形における精度要求

ギヤは動力を伝達する重要な機械部品であり、高い精度が求められます。成形されたギヤの精度は、歯の形状、ピッチ、歯厚など、多岐にわたる要素によって評価されます。これらの精度が不足すると、ギヤ同士の噛み合いが悪くなり、騒音や振動の増加、伝達効率の低下、さらには早期摩耗や破損につながる可能性があります。特に、小型化、軽量化が進む現代の製品においては、わずかな寸法誤差も許容されません。そのため、射出成形プロセス全体を通じて、厳格な品質管理が不可欠となります。

材料選定の注意点

ギヤの射出成形において、最適な材料を選定することは品質を左右する最初の重要なステップです。ギヤに求められる性能は、使用される環境によって大きく異なります。

例えば、高い強度や耐摩耗性が求められる場合は、ポリアセタール(POM)やポリアミド(PA)がよく使用されます。

一方、耐熱性や寸法安定性が重視される場合は、スーパーエンプラと呼ばれるPPS(ポリフェニレンサルファイド)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などが適しています。

また、使用環境が厳しい場合は、ガラス繊維や炭素繊維を添加することで、強度や剛性をさらに高めることも可能です。しかし、添加剤は成形収縮率に影響を与えるため、その特性を十分に理解した上で選定する必要があります。

金型設計・製造の注意点

ギヤの精度は、金型の設計と製造によって決まります。特に、歯形を転写するキャビティ部の精度は、最終的な製品の品質に直結します。金型設計においては、成形時の材料の収縮を正確に見込み、それを考慮した上で寸法を設定することが極めて重要です。ギヤは複雑な形状をしているため、射出圧力が均一にかからず、部分的に収縮率が異なることがあります。これを避けるために、ゲートの位置や数、ランナーの太さなどを最適化し、樹脂がスムーズにキャビティ全体に行き渡るように設計する必要があります。

また、金型から成形品を取り出す際の変形を防ぐため、適切な抜き勾配を設けることや、エジェクタピンの位置を工夫することも大切です。金型の製造には、高精度な加工機と熟練した技術が求められます。

射出成形の注意点

金型が完成したら、射出成形機の条件を最適化することで、不良を最小限に抑えます。射出速度は、キャビティへの樹脂の充填状態を左右し、成形品の品質に直結します。速すぎると焼付きやバリが発生しやすくなり、遅すぎると充填不良やウェルドラインが生じる原因となります。

射出圧力は、樹脂をキャビティに充填し、収縮を補うために重要な要素です。圧力が不足するとヒケやショートが発生し、高すぎると金型が開く原因になったり、バリが出たりします。

樹脂温度と金型温度も重要なパラメータです。樹脂温度が高すぎると分解してしまい、低すぎると流動性が悪化します。金型温度は、成形品の冷却速度を調整し、収縮率や反りを制御するために重要です。

これらのパラメータは単独で調整するのではなく、お互いに影響し合うため、総合的にバランスを取りながら最適な条件を見つけ出すことが非常に重要です。

成形後の品質管理

ギヤの成形が完了した後も、品質を維持するための管理が欠かせません。成形品は冷却される過程で収縮し、わずかに変形することがあります。このため、安定した品質の製品を供給するためには、成形条件を常に監視し、一定に保つことが重要です。

また、定期的に製品の寸法を測定し、設計仕様を満たしているかを確認します。特に、歯形の精度は専用の測定器を用いて厳密に検査する必要があります。さらに、ギヤの性能を評価するために、歯車の噛み合いを実際にテストするなどの機能評価も行われます。これらの品質管理プロセスを通じて、顧客の要求を満たす高品質なギヤの製造が可能になります。

ギヤの射出成形ならお任せください

いかがでしょうか。当記事では、ギヤの射出成形における注意点とジュラロン工業の取り組みについてご紹介しました。小物精密部品の射出成形でお困りでしたら、ぜひ一度ジュラロン工業へご相談ください。長年の経験と技術力で、お客様の課題解決をサポートいたします。

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